きよさんガーデンプロジェクト
誰もが自然と助け合う共生社会を
Interview
障がい者と健常者の心のバリアフリーを目指す
膠原病(全身性エリテマトーデス:SLE)、特発性大腿骨壊死症(両側股関節人口骨置換術)、多発性硬化症(MS)という3つの難病とともに生きる私は、車いすユーザーです。みんなから「きよさん」と呼ばれています。ある時、多様性を認め合うような勉強会をよく開催していたかつての勤務先で、「吉川さんの経験を子どもたちに語って聞かせたらいいんじゃない」と同僚から声をかけられたことをきっかけに、今の活動が始まりました。社会福祉協議会の方から、「今までは車いす体験のみを行ってきましたが、車いすに乗ったり押したり説明を聞くだけでは、車いす生活の大変さに気付くことが難しいと感じたので、当事者のきよさんの体験を聞いて、車いす体験を実施したいです」と言っていただき、東広島市内の小学校で3~4年生を対象に講演会(福祉体験授業)を行うように。それ以来、毎年のように同様の授業を実施しています。子どもたちはまっすぐな目で私の話を真剣に聞き、車いすでの生活や障がい者理解に大きな関心を示してくれています。
「障がい者と健常者の心のバリアフリーを推進していきたい」。そう考える私の思いに共感してくれる人たちが集まり、その後、「きよさんガーデンプロジェクト」が発足。市民の皆さんや、広島国際大学、広島大学の学生さんなどが参加して、講演会やイベントの企画、啓発活動、情報発信などを一緒に行ってきました。
講演会ではおもに、私の体験談をお話ししていますが、なかでもよく話すのが水泳についてです。病の発症と手術により、これまで好きだった剣道や陸上などのスポーツ、趣味のバイクに乗ることが難しくなってしまいました。体を自由に動かすことができなくなった私に、担当医師が「浮力があるので体に負担が少なく、全身の筋肉を使える運動だから」とおすすめしてくれたのが水泳でした。もともと水泳は大の苦手で、5mも泳げなかったほどです。そこで障がい者のスポーツ振興事業を行っている「スポーツ交流センター おりづる」へ通うことにしました。ここで指導を受けながら少しずつ練習。25mを泳げるようになるまでに2年ほどかかりましたが、練習の甲斐あって「全国障害者スポーツ大会」に広島県代表として出場。25m自由形で金メダルを、50m自由形で銀メダルを獲得することができました。その後3つ目の病を発症し、競技区分が変更になり、今は上腕だけで泳ぎ、日々練習を続けています。現在は、「広島県障害者水泳競技会」の大会記録保持者でもあります。この話を通し、「どんな時でもあきらめずに続ける気持ち」を育んでもらえたらうれしいと思っています。
また、私の全国への旅行体験=推しの応援についてもお話ししています。コロナ禍で心が沈んで前を向けなくて病気に負けそうになった時、テレビで観て耳にした「THE BEAT GARDEN」というアーティストの「Start Over」という曲。とても素晴らしくて勇気と元気をもらい、もう一度前を向くことができ、それ以来大ファンに。今では全国各地のライブに行き、大好きな推しの応援に励んでいます。講演会では、子どもたちに「車いすで一人で旅行できると思う?」「答えは……できるんです。大好きな推しのライブに、東京をはじめ各地に行っています」と時折クイズを混ぜながら、その時の状況を想像してもらいます。行く先々でいろんな人に助けてもらうことで、「できない」を「できる」に変えてもらい、一緒に楽しむことができています。ほんの少しの思いやりと優しさで誰もが笑顔になれるし、困った時は声に出してみるときっと誰かが手を差し伸べてくれます。だから何でも諦めずに挑戦してほしいと思っています。そして子どもたちには、「“自分にできること”で、困っている人がいれば声をかけてみてほしい」と思っています。そのひとつひとつが“優しい心の種まき”の機会なんです。「出会いは宝物」だということを、これからも伝えていきたいです。
目指すのは、障がい者と健常者の心のバリアフリー。最終的には、障がいの有無にかかわらず、誰もが自然体で助け合い、笑顔で暮らせる共生社会を実現できればと思います。

みずからの体験と

人との出会いが

いちばんの宝物

きよさんガーデンプロジェクト
代表
吉川 清代江さん
公開日:2026年10月

きよさんガーデンプロジェクトのSDGs実践

講演会の開催
東広島市の学校を中心に、「車いす きよさん 出会いは宝物!」と題した講演会を開催。小学生から高校生、大学生などを対象に、依頼者と事前打ち合わせを行って、それぞれの世代や学びたいことを聞いて内容に織り込んでいます。近年では世羅町や三原市の学校からも声がかかり、活動の広がりを実感。毎年訪れている小学校では、児童たちが「きよさん」と手を振ってくれたり、「自分もあきらめないで頑張ろうと思います!」という温かい感想をもらったりと、子どもたちとのつながりを感じています。
対応するSDGs ゴール
イベント開催で車いす体験
12月3日は「国際障害者デー」で、12月3日から12月9日までの1週間は「障害者週間」となっています。これに合わせて、「みんなで体験!福祉の世界inひがしひろしま」というイベントを毎年12月の第1日曜に開催。車いす体験を行っています。内容は、車いすスポーツ体験や技師装具の装着体験など。障がいに興味や関心を持ってもらい、自分にできることを見つけてもらえることを目的にしています。親子連れの参加も多く、お子さんがきよさんガーデンプロジェクトの取り組みを知って、親へ「車いす体験に参加したい」と言って一緒に来られるケースも。「わが子が福祉の分野に興味を持っているんだ」と驚かれることもあり、「来年はボランティアとしてイベントに携わらせてほしい」という申し出をいただいたりもします。今後も継続して行っていく計画です。
対応するSDGs ゴール
絵本制作を通じた啓発活動
私のこれまでの歩みを、何か形に残して伝えていくことができればと思い、きよさんガーデンプロジェクトのメンバーと話し合って、講演テーマ「車いす きよさん 出合いは宝物!」の内容をもとに絵本を制作。「きよさんシリーズ」として第6巻まで作ることになりました。広島県立図書館の蔵書としてもおさめられていて、たくさんの人の手に取ってもらっています。
対応するSDGs ゴール
障がい者雇用にもつながる活動へ
きよさんガーデンプロジェクト代表
吉川 清代江さん
これまでの私の活動は、周りで支えてくれる人、一緒に走ってくれる人がいたおかげだとしみじみ感じています。今後は、本人と職場をつなぐ“最初の一歩“のお手伝いをしたい。そう考えて、新たに「Starting」というプロジェクトを立ち上げました。これは言わば、自分の“トリセツ”。「言葉にするのは苦手、でも絵なら表現できる」など、一人ひとり得意なことや苦手なことは異なります。「理解してほしいことや伝えたいこと」を企業に伝え、長期雇用につながるコミュニケーションツールとして活用するのがStartingです。雇い主側にトリセツを理解してもらうことで、互いに気持ちよく働ける環境を整えていきたいです。今はまだ試作の段階ですが、今後うまく活用していけたらと考えています。
東広島SDGsパートナーとなり、新たなつながりも生まれました。これからもっと活動の場を拡大し、「東広島市でこんなことしてるんだ」という認知を、市内外に広げていきたいです。そして、同じ障がい者の人たちが「自分も何かやってみよう」と思える機運を高めていきたいと思います。
企業・団体情報
団体名
きよさんガーデンプロジェクト
団体紹介
車いすユーザーの吉川清代江さん(きよさん)を中心に、障がいの有無にかかわらず誰もが助け合い笑顔で暮らせる共生社会を目指して発足。市民や大学生が参加し、講演会やイベントの企画などを行っている。吉川さんの体験をまとめた絵本制作や、障がい者雇用につながるプロジェクトも手掛ける。テーマは「ほんの少しの優しさと思いやりで お互いのことを気付ける人に 『できない』を『できる』に!」。
URL
https://kiyo3garden.studio.site/
メール
kurumaisu.kiyo3@gmail.com