私たち「広島大学馬術部」は、部員22名、指導者6名の環境で、日々練習に励んでいます。馬を休息させる休馬日を除いてほぼ毎日活動しており、夏は早朝4時半から馬場に向かっています。全国大会で結果を残すことを目標にトレーニングに精を出していますが、馬術では技術向上以前に、まずは馬と人が心を通わせ合うことがとても大事です。活動の7割は馬の世話と言っても過言ではなく、餌やりや掃除、馬の手入れなどを皆で毎日丁寧に行っています。
特に厩舎の掃除はなかなかの重労働で、おがくずや尿も含めた馬ふんが、1頭につき1日で約35kg排出されます。以前はこれらを瀬野川にある乗馬クラブまで運んで処理をお願いしていましたが、大学から遠方であるために、学生のクルマの運転に伴う危険や時間の捻出において課題を抱えていました。「馬ふんが欲しい」と言われる農家さんもいたので田に活用する試みも行ったのですが、きちんと堆肥化されていない馬ふんは残念ながら作物の生育にあまり向いておらず、十分な結果を出すことができませんでした。そこで、大量に出るこれらの馬ふんをきちんと活用できればと大学に相談。発酵処理施設を造ることが決まり、有効活用の道筋が見えたのです。施設は2023年の年末に完成。4ブロックに仕切られた仕様で、各ブロックで約1ヶ月ずつ馬ふんを発酵させ、発酵堆肥が出来上がります。私たちはこの堆肥を、大会で優勝した馬にちなんで「優勝堆肥」と呼んでいます。発酵堆肥が出来上がったのと同時に、地元メディアなどに取り上げていただき、堆肥を必要とする人に向けて呼び掛けたところ、大きな反響をいただきました。現在は約40名ほどの農家さんとやり取りをしており、農地で活用してもらっています。農家さんには「おかげで作物がよく育つようになったよ」とのお声をいただき、私たちも非常に嬉しく思っています。
以前、東広島流通センターとご縁をいただき、売り物にならないようなハネニンジンを、馬のエサとして何度かご提供いただいておりました。今度は私たちが、それらを食べて立派に育った馬から出た排泄物を堆肥化し、有機農業に貢献できるのです。人にも自然にも優しいこのサイクルを、今後もうまく活用して循環型の社会に寄与できればと思っています。
広島大学馬術部