もともと理学療法士として働いていた私は、ある時、激務からうつ状態に陥ってしまいました。仕事へ向かうことができない、そんなどん底の時に心を支えてくれたのがSNSで見かけた障がい者アートでした。ハンディキャップを持った人が描いたアートの独特な色づかい、醸し出す雰囲気が、まるでリハビリを受けるかのように心に深く染み入ったのです。「この素晴らしいアートを、もっと多くの人に知ってほしい」。その思いで、アーティストと絵を広める活動を始めたのですが、当時は目指す方向性の違いもあり、いったんその活動はストップすることになりました。
いろいろと考えた末、「まずは誰かと何かを作り上げ、楽しい気持ちを分け合えるような活動をしよう」と、2024年2月に自分の得意分野とするリハビリや健康に焦点をあてたイベントやマルシェを開催する会社を設立。ほどなくして、障がいのあるアーティストへのリスペクトを大切に、支援ではなく対等なパートナーとして一緒にものづくりを行う岩手県の会社『ヘラルボニー』のアートを目にする機会がありました。そこであらためて感じたのは、「やっぱり障がい者アートは素晴らしい。これをやっていきたい」という強い気持ち。同じ頃、新しいビジネスに挑戦する人が集まるイノベーション創出拠点「ミライノ⁺」へ通い始めたこともあり、共創型起業プログラム「円陣」に参加。サポートしてくれる人たちのおかげもあり、障がいのあるアーティストと社会をつなぐサービス「Alkemix(アルケミクス)」が誕生したのです。各地のビジネスコンテストでも採択されたこのサービスは少しずつ認知度を高めていき、自身が思い描いていたような仕事へとつながっていきました。
2025年11月にはアートコンテストを開催し、県内外の障がいのある人や生きづらさを抱えたアーティストから83作品が集結。複数の受賞者と契約させてもらい、プロデュースができるようになりました。ホテルでの展示販売会や、広島空港でのライブペインティングなど、活動の場は徐々に拡大。企業から声をかけてもらう機会も増え、建設現場の囲いに絵を描かせてもらうなど、たくさんの人の目に留まりやすいような場でのアート披露も増えています。アーティストの皆さんからは、「自分一人じゃ成し遂げることができなかった」「生きてて良かった」というような声を聞くこともあり、私自身がそんな声に励まされながら、「もっとこのサービスを広めていきたい」と強く感じています。
わざわざ美術館に行かなくても、身近なところでこれほど素晴らしいアートに触れられる機会を増やし、ゆくゆくは多様性が認められる社会を構築していきたい。「障がい」という言葉がなくなり、一人ひとりの個性が輝くような、そんな未来をつくっていけたらと思います。
株式会社Switch