国内最大級のサステナビリティに関する
カンファレンス無料招待選考に向け、
中国5県の高校生が事前学習
「サステナブル・ブランド国際会議」とは、国や職種、職業の垣根をこえて5000人以上が共通のテーマでディスカッションする、国内最大級のサステナビリティに関するカンファレンス。「SB Student Ambassador ブロック大会」は、この会に高校生を無料招待する「SB Student Ambassador」選考に向けての事前学習の場となります。
北海道から九州まで全国各地のブロックで開かれており、2025年の中国ブロック大会は11月15日(土)に広島大学で開催。今年は新たに「中国地方に企業や若者が集う、魅力的な拠点のあり方を考えよう」という中国ブロック大会独自のテーマを設け、5県から集った高校生205名がSDGsについての学びを深くしました。

複数の参加高校をミックスしてグループ分けを行い、議論するこの大会。普段からSDGsについて学習している高校、社会課題に関心を持つ多くの生徒が集い、盛り上がりを見せました。
開会にあたっては、サステナブル・ブランド・ジャパン カントリーディレクターの鈴木紳介さんから概要説明があり、開催場所となった広島大学の越智光夫学長、大会を共催している株式会社日本旅行西日本エリア代表の関昌博さんからも挨拶をいただきました。
開催地となっている東広島市の川口一成副市長からは、市のこれまでの歩みや、東広島市が広島県初選出のSDGs未来都市であり、全国でも高い意識を持つサステナビリティ先進地であることなどが語られました。「まちにおけるSDGsの推進には若い力が必要です。未来をより良くするため、社会課題解決のため、今日はさまざまにアイデアを出して、課題解決力を身につけてください」という言葉に、高校生たちは真剣に耳を傾けていました。

午前の部のメインは、サステナブルな活動を行う企業の基調講演と、スポンサー企業によるパネルディスカッション。まずは『合同会社シーベジタブル』の新北成実さんから「感じる力が、未来をつくる。―海藻との出会いから始まった、わたしのサステナブルアクション―」と題したお話をいただきました。
合同会社シーベジタブルは、海藻生産に関する研究と開発、栽培、料理や商品開発、販売などを行う会社。海苔や昆布などいろいろな種類がある海藻ですが、実は近年、藻場が減り、漁獲量も減少しているそう。海藻が豊かに茂る海は生態系への良い影響をもたらし、海も人もすこやかにしてくれます。そのためシーベジタブルでは、海藻の栽培やその活用に力を入れているのだそうです。
新北さんが海藻に魅せられたのは大学生の頃。以来研究に打ち込み、その後シーベジタブルと出会って現在の職に就いたことを語ってくれました。講演のなかで新北さんは、学生時代にバドミントンの部活動で「スマッシュが変わったと感じた瞬間」についても話してくれ、「海藻に夢中になった時もそうだけど、これだ!ってものに出会った瞬間を大切にしてほしい」と高校生にエールを送りました。“感性を磨く”ことの有用性を訴える講演会は学びが多く、あっという間のひとときとなりました。

続いて行われたパネルディスカッションでは、今回のスポンサー企業の自己紹介と、おのおのの会社のサステナブル活動についてお話しいただきました。
参加企業とディスカッションテーマは以下の通りです。

テーマ「小売業の果たす役割」
経営企画部
サステナビリティ推進課 課長
松永純一氏

テーマ「循環型社会の実現」
サステナビリティ推進室
サステナビリティ企画推進課
チーフマネージャー
若林大介氏

テーマ「食の可能性」
常務取締役 共創本部
本部長
宮田裕也氏

テーマ「ウェルビーイングの実現」
経営企画部 経営企画部長
秋信裕子氏
今回のパネルディスカッションでは、各企業が持ちよったトークテーマに対し、高校生からの質問タイムをたくさん設け「聞いてみたいことがある生徒さんは挙手をお願いします」と促すと、はじめはパラパラと、そのうち順番を競うように次々と手が挙がりました。
高校生から飛び出したさまざまなクエスチョンと企業のアンサーを、一部抜粋してお届けします。
「オタフクソースさんに質問です。会社紹介のところで、目指すSDGsゴールのひとつに『♯4.質の高い教育をみんなに』があったのですが、それはなぜでしょうか」
「私たちオタフクソースは、お好み焼の作り方を教えたり、教室を開いています。これは食育のひとつであり、料理を作る人や材料を育てる人に対して感謝の気持ちを持ってもらいたいという願いからです。これまで小学校に対しては2000名以上、海外からの観光客も含めた一般の人に対してはのべ2万名以上、お好み焼教室を開催してきました」
「広島テレビさんに質問です。『わたしらしく生きるプロジェクト』という女性活躍プロジェクトを推進されているそうですが、これは社内のジェンダー平等を確立するために行っているのでしょうか?それとも社内ではなく、世界に向けた発信なのでしょうか?」
「私たちは広島の企業なので世界に向けた発信は難しいのですが、プロジェクトにおいては社内外どちらもを対象にしています。会社は現在125名の社員がおり、そのうち29名が女性社員です。まだまだ女性の管理職は少なく、仕事と家庭の両立といった働く上での困難もあります。その改善を目指すと同時に、県内で同じ思いを抱えている人と課題を共有し、解決できるよう共に頑張っていきたいと考えています」
高校生らしい目線の素直な質問もあれば、日頃からSDGsについて学んでいる生徒ならではの鋭い質問も出たパネルディスカッション。午後のワークに向けて、徐々に熱量が高まっていきました。

午後からは企業別に教室を分け、ミニ講演会とワークを実施。高校生たちは事前に渡されたネームカードに記してあるグループへ移動を行いました。
生徒たちはミニ講演会を聴講後、各企業から与えられるテーマに合わせて議論。広島大学の学生がメンターを務め、85分間で意見を交わしながら課題解決策を導き出していきます。
ミニ講演会の内容は、以下の通りです。

株式会社イズミ
SDGs目標 #12.つくる責任つかう責任 #13.気候変動に具体的な対策を #17.パートナーシップで目標を達成しよう

株式会社エフピコ
SDGs目標 #12.つくる責任つかう責任 #13.気候変動に具体的な対策を #14.海の豊かさを守ろう

オタフクソース株式会社
SDGs目標 #3.すべての人に健康と福祉を #4.質の高い教育をみんなに #11.住み続けられるまちづくりを

広島テレビ放送株式会社
SDGs目標 #5.ジェンダー平等を実現しよう #16.平和と公正をすべての人に
講演後、出されたテーマに対してグループごとに解決策を探り、模造紙にまとめていく高校生たち。一方別部屋では、企業と各学校の教員による交流会を開催しました。こちらのテーマは、「~学外と連携した体験機会の創出~」。複数のテーブルに分かれて自己紹介を行い、その後、各学校や企業での取組み、それらを実施するうえでの工夫や悩みをざっくばらんに話していきました。
あるテーブルでは「探究学習」がテーマとなり、先導する先生たちのアイデアや苦労話に花が咲きました。またあるテーブルでは、「修学旅行」や「職場体験」が議題にあがり、それぞれの経験談が寄せられていました。
中には「生徒たちに、企業さんの活動について直接話をしてほしい」という要望が出たところもあり、出前授業などの経験がある企業は、「ぜひ伺います」と快く引き受ける場面も見受けられました。
最後は各テーブルから代表者が感想を発表。「他校さんの活動を知ることができて大変参考になりました」「学校内で用意することが難しいさまざまな体験の機会を、ぜひ企業さんにアシストしていただければうれしいです」というような声があがりました。

午前に基調講演を聴いたホールへ戻り、大会はいよいよフィナーレへ。各企業から出されたテーマに対する解決策を発表します。それぞれの部門から選出された代表グループが、プレゼンテーションを行いました。
お客さま・地域・お取引さま・テナントさまとともに、SDGsの目標達成に向けて地域社会や店舗で私たちが取組めることを考えてみよう!
代表グループの発表:「YUME NO YOUME TOWN」
社会課題解決が叶う設備を店舗の随所に導入。屋上は植物園にし、買い物客に無料で開放。それ以外からは入場料を徴収し維持管理の費用にあてる。食品ロスで出た食材は肥料にして植物園へまわし、バイオマス発電の燃料にもする。施設全体を弱冷房にして、自動ドアを手動に切り替えるなど節電を心がけ、CO2の排出量を少なくする。


私たちは普段から、社会課題解決とお客さまにどう楽しんでもらうかを念頭に置いています。こちらの案はその両方を満たしてくれるアイデアがたくさん散りばめられていました。屋上から1Fまで、すべてのカテゴリーですみずみまで考えてくれたところが良かったです。(松永氏)

リサイクルしている食品トレーの回収を増やすためにできる企画や取組み、今後のプラスチック製食品容器とのかかわり方について考えてみよう!
代表グループの発表:「みんなで楽しくラクラクに」
トレー回収において、「ラクラク」「回収」「うれしい」「伝達」の4つの項目に分けて工夫を立案。「ラクラク」では洗いやすい容器形状にすることなど、「回収」はより人が集まりやすい場所に回収ボックスを置くことなどを提案した。また、「うれしい」では買い物時に使えるポイントやゲームセンターで使用できる無料券を回収時に付与すること、回収ボックスにトレーを投入するとアプリ内のAIペットが育つなどのアイデアも発表。


どのグループの発表もよくまとまっていて、代表を選出するのが難しかったです。こちらのグループはトレー回収を広く皆さんに発信できる点や体系立てて考えられているところが素晴らしかったです。個人的にはAIペットのアプリ導入というアイデアが面白かったです。(若林氏)

持続可能な社会とお好み焼の可能性
代表グループの発表:「世界に広がるBORDERLESS FOOD OKONOMIYAKI」
学校の地理の授業で習った「ガーナの子どもたちは農園で労働を強いられているにもかかわらず、自分で育てたカカオを食べたことがない」という問題点を解決するため、「ガーナの子どもたちにカカオを食べる機会を与えるお好み焼」を考案。ココナッツを混ぜた生地に果物をトッピング、苦味のあるカカオ粉末でアレンジするスイーツ仕立てと、ヤムイモ生地にジャガイモ麺を加え、スパイシーなカカオソースで味わうミール系の2つを考案した。


私たちはお好み焼を「OKONOMIYAKI」として、世界共通の食になるよう周知に励んでいます。このアイデアは世界食というミッションだけでなく「カカオを食べたことがない子どもたちに」という課題もクリアしていました。発表時に口にしていた「SDGsは次世代への贈り物」という言葉にも非常に感銘を受けました。(春名氏)

SDGsのテーマの中から、訴求したいもののCM(PR)絵コンテを作ってみましょう!!
代表グループの発表:NOポイ捨てを訴える、ゴミ怪獣に食べられるCM絵コンテ
SDGsゴールの中から「#14.海の豊かさを守ろう」に着目。ペットボトルをポイ捨てした少年がゴミ怪獣に食べられるCM絵コンテを制作した。ゴミ怪獣に食べられるシーンは迫力のある構図と効果音で子どもたちに危機感を持たせること、ゴミを捨てるシーンでは、描く背景に自由の女神やエッフェル塔といった特定の構造物を避けることで、どこの地域かを想像しにくいような工夫を凝らした。


いずれのグループも甲乙つけがたい、素晴らしい発表でした。CMは説明付きでなくとも、パッと見て内容がわかることが大事です。こちらの案はキャッチーな言葉選びや大胆な構図が優れていたと思います。テレビで流れているCMも15秒間に伝えたいことがギュッと詰まっています。ぜひまた違った目で普段のCMを見てみてください。(秋信氏)

広島では3回目の開催となった中国ブロック大会。今回もまた、SDGsに対する高校生たちの関心の高さが伺える、熱い1日となりました。
最後に、東広島市の参加校の生徒と先生、大会関係者から感想をいただいたので紹介します。
「校外学習で平和探究を行ってきたのですが、今回、“SDGsと平和”という視点で学びを深められた点が良かったです。新しい見方をすることができたように感じています。卒業研究のテーマを平和にしているので、今後は今日の学びを卒業研究や将来の職業選びに生かしていきたいと思います」(魚谷さん)
「本校では生徒がそれぞれ卒業研究に取り組んでおり、今日の大会を通じておのおののテーマを深掘りできたのではないかと考えています。一教員としては、企業の皆様と交流が持てたことも大変良かったです。学校ではなかなか見られないような、生徒たちの新たな一面を見ることができました」(木屋先生)

「これまで学校を通じてさまざまなイベントに参加してきました。現代社会の問題に焦点をあてるようなイベントに出たことがなかったので、今回思い切って参加してみました。初めて出会う他校の生徒さんたちと意見を交わし、自分では思いつかなかったようなアイデアや視点を知ることができ、とても有意義で楽しい時間でした」(増田さん)
「本大会には過去複数回参加してきました。普段は東広島を拠点に探究活動を行っているので、他県の生徒さんたちや大学生、企業の方々と交流を持つことができ、意義ある1日でした。世界的な社会課題と向き合う真剣な大人たちの熱量に触れ、良い刺激になったと思います。この先、生徒たちが学校を飛び出して大いに活躍してくれるよう願っています」(新本先生)

「普段企業の方たちと話す機会はないので、今回直接お話をして、環境への配慮といった取組みを知ることができて良かったです。初めて出会う生徒さんたちとディスカッションし、人前で話す力も向上しました。これからも自分の興味が向くものにしっかりとアンテナを張り、経験値を高めていきたいです」(延安さん)
「おのおのの企業さんの考えや活動を知れたこと、同世代のさまざまな考えに触れられたことが良かったです。自主的に学び、考える大切さを痛感しました。たとえ自分一人の思いであったとしても、発信すれば誰かに刺さることはあるのだと思います。今後も積極的に、自分の考えや思いを発信していきたいです」(中下さん)
「従来に比べ非常に多くの参加校で、たくさんの生徒さんから良い刺激をもらえたのではないかと思います。企業さんから伺ったお話は、今後の授業でも生かせそうです。学校では控えめに過ごしている生徒も、今日は一生懸命コミュニケーションを取り、自分の意見を述べていました。志を同じくする仲間と出会えたことが大きなメリットだったと思います」(野平先生)

「中国ブロック大会が広島で開催されるのは、今回で3回目となります。生徒数205名・教員数33名という過去最大の規模感で執り行うことができ、非常に意義ある時間となったのではないでしょうか。日本旅行広島支店で教育の分野を担当している社員が、学校関係者の方から『学びの場が校内で完結してしまうことが多く、もっと校外に活動を広げていきたい』というご相談を受けることがあります。本大会は、高校生たちがさまざまな企業や、そこで行われているサステナブル活動について知る貴重な機会。今回は特に地元を代表する企業様4社にご参加いただき、高校生の皆さんも興味深く話が聞けたのではないかと思います。広島は若い世代の人口流出が問題のひとつになっています。今日の興味関心が、これから地元を出たとしても、いつかまた『広島に戻ってきたい』という気持ちにつながればと思います。今後も中国5県で協力してこの大会を継続し、中国地方のサステナビリティに対する機運を醸成していきたいです」(広島支店 副支店長 冨永さん)
