SB国際会議に高校生を無料招待
選考に向けての事前学習の場
2024年9月28日に行われた、「第5回 SB Student Ambossador 地域ブロック中国大会」。昨年に引き続き、広島大学を会場に中国5県の高校21校が参加し、第5回が執り行われました。
サステナブル・ブランド国際会議とは、国や職種、職業の垣根を越えて5000人以上が共通のテーマでディスカッションする、国内最大級のサステナビリティに関するカンファレンス。今年度は2025年3月に「第9回サステナブル・ブランド国際会議 2025 東京・丸の内」の開催が予定されています。「SB Student Ambassador ブロック大会」は、この会に高校生を無料招待する「SB Student Ambassador」の選考に向けての事前学習の場。
北海道から九州まで全国各地のブロックで開催され、その後、論文選考などを経て選ばれた高校が同会議へと招かれます。
開会に先立ち、サステナブル・ブランド・ジャパン カントリーディレクターの鈴木紳介氏から挨拶。そもそもサステナブル・ブランド国際会議とは何なのか、どのような意義があるのかという話をいただきました。
さらに、開催地である東広島市長からは、1974年に市政がスタートした東広島は今では人口が3倍になっていること、4つの大学を抱える知の集積地でもあり、今後はSDGsとDXを要にしたまちづくりをしていきたいこと、最終的にはその先にあるウェルビーイング(一人ひとりが心身ともに満たされた状態で良く生きられること)が目標であり、それを叶えるために若い世代の力が必要であることなどが語られました。
髙垣市長の「“誰一人取り残さない”という理念を念頭に置きながら、イノベーションがおこるまち、新しい生活価値を提供できるまちを目指したい」という言葉に、高校生たちも真剣に耳を傾けていました。
また、広島大学の越智光夫学長からはビデオメッセージを、共催の株式会社日本旅行・平野喜隆氏からも挨拶をいただき、大会がスタートしました。
休憩をはさんだのち、第一部は「株式会社Gab」代表取締役CEOの山内萌斗氏による基調講演が行われました。講演テーマは、「正しさよりも、まず楽しさ!ソーシャルビジネスの成功法則」。
株式会社Gabはエシカルブランドに特化した商品販売&グロース支援を行うプラットフォーム「エシカルな暮らし」と、ゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清掃中」を二本の柱とする企業。そもそも、なぜこの事業に行きついたのか、学生時代に部活でつまずいた時の話から、方向転換して自分の居場所を見つけた時のこと、そこで見つけた“ありがとう量の最大化”という考え方まで、山内氏の学びが、これまでの歩みと共にたっぷりと語られました。大学時代はシリコンバレーで研修を受け、“人類から感謝されるmust haveな事業”という視点に気付き、そのことが今のビジネスの礎になっているのだそうです。
山内氏は冒頭で、「SDGsって例えば環境とか貧困とか、自分事として考えようとすると、少し大きな問題になってきませんか?それを解決するって、なかなか難しいと思うんです。でも、“なんか楽しそうだったからやってみた”っていう小さなことが、気付いたらSDGsの達成に貢献していたりするんですよ」と高校生にレクチャー。
最後は「大きく遠いことより、小さく近いことを」というメッセージで、私たちにもできることがあるという点を気付かせてくれました。
続いて行われたのは、スポンサー企業によるパネルディスカッション。各企業から自己紹介があり、それぞれのテーマに基づいて、働く中でのやりがいやミッション、次世代に期待するところなどが語られました。参加企業と各企業のテーマは以下の通りです。
テーマ「地域社会の活性化」
サステナビリティ推進部
サステナビリティ推進課 課長
松永純一氏
テーマ「資源循環」
サステナビリティ推進室
ジェネラルマネージャー
冨樫英治氏
テーマ「地球・人・社会の課題解決」
コーポレートコミュニケーション本部
コミュニケーション統括部
ESGコミュニケーション Gr. マネージャー
馬渡信行氏
テーマ「住まいと環境」
サステナビリティ推進部 部長
三浦俊介氏
ディスカッション後には、高校生からの質問コーナーを実施。イズミのテーマ「地域社会の活性化」に対しては、「東京一極型になっている現状をどう思われますか」という質問が、エフピコのテーマ「資源循環」に対しては、「プラスチックに代わる代替案はあるのでしょうか」などの質問が飛び出し、会場を沸かせました。
前者に対し松永氏は、「イズミは西日本を中心に展開しているため東京一極型にはあまり関わりがないのですが、関東圏の人たちがこちらに帰省した際に、『ゆめタウンにお土産買いに行こう』『ゆめモールができたから行ってみよう』と思ってもらえるような、そんな店づくりで地方の活性化に貢献していきたいです」と回答。
また、後者に対して冨樫氏は「現在需要と供給のバランスを見て求められている素材がプラスチックであり、そのため私たちはリサイクルという環境負荷のかからないかたちでプラスチックをメインに製造を行っています。一方、紙やバイオマス素材といった植物由来の素材開発も進めており、需要と供給のバランスが取れればこちらも併せて提供していきたいです」と、教えてくれました。
会場がしだいに熱気を帯びていった午前の部は、このあと、高校生と企業がタッグを組んだサステナブルな事業事例の紹介などを経て、無事に終了しました。
午後はメインイベントである、テーマ別ワークショップへ。参加校をミックスしてグループを作り、それぞれの企業のルームへ割り振って、ディスカッションを行います。
各企業からのミニ講演が開かれた後、ディカッションテーマを発表し、そのテーマに基づいて高校生が議論を行うのです。導き出された各グループの課題解決案を模造紙にまとめ、最後は発表となります。
高校生たちは各講義室でミニ講演を聴講した後、それぞれのグループでディスカッションをスタート。「この課題の原因は何なのか、まずは調べてみよう」「映える感じでイラスト入れてみようよ」と、各々で工夫を凝らしながら解決案をまとめていく様子が見受けられました。
いずれ劣らぬ素晴らしい課題解決案が出そろったワークショップ。各講義室で発表が行われ、それぞれのルームのやり方で代表グループが選出されました。すべてを紹介したいところですが、以下に代表グループの課題解決案と講評を記します。また、講演を行い、実際に高校生と触れ合った企業の皆さんから声もいただいたので一緒に紹介します。
地域とともに持続可能な社会を目指すイズミの取組みと役割
企業の方の声
「昨年も参加させていただきましたが、高校生の熱量がすごいと思いました。目の輝きが違いますね。私たちにとっても、会社のことを知っていただくありがたい機会だと考えています。高校生の皆さんは、こうして他校の生徒さんも交えて、相手の考えも聞きながら自分の考えをまとめて発言する場は、なかなかないのではと思います。どうか積極的にインプット&アウトプットして、考え抜く力を養ってほしいと思います」(松永氏)
お客さま・地域・お取引さま・テナントさまとともに、SDGsの目標達成に向けて私たちが取組めることを考えよう!
「めっちゃモリモリ~!エコマーケット」
店内をコーナー分けし、地域の農家や学生がコラボした商品が並ぶ広島コーナーを用意。紙袋には折り鶴再生紙を用いる。海洋ゴミを使ったリサイクル商品が並ぶエシカルコーナー、余剰食品を預かって販売するフードドライブ市場も設置。売れ残った商品は家畜の飼料として提供するなど、生産者にも企業にもwin-winの姿勢を構築する。
店の様子が頭の中で思い描きやすかったです。費用をかければいろいろな課題を解決できると思うのですが、こちらの案はその費用を捻出する方法から考えてくれました。競合会社と連携するという点も、今後必要になってくる視点であり、とても良かったです。(松永氏)
エフピコ方式の資源循環型サイクル
企業の方の声
「言葉としてのサステナブルはずいぶん浸透してきましたが、では実際にどのような動きがあるのか、今大会は高校生がそれを知ることのできる重要な機会。世の中にはいろいろな情報があふれていますが、正しいかどうかは自分で調べないとわかりません。私たちの会社では、『現場に出向く』『現物を見る』『現実を知る』という三現主義を大事にしています。若い皆さんにもこのような考えがあることを知り、興味や関心を持って行動を起こしてほしいです」(冨樫氏)
~食品トレーのリサイクルでSDGsに取り組む~使い終わった食品トレーは貴重な地上資源!リサイクルしている食品トレーの回収を増やすために、できる企画や取組みを考えてみよう
「~子供が楽しめるリサイクルボックス~おみピコ!」
食品トレー回収ボックスが設置されていない、設置されていてもわかりづらいという点に注目。ターゲットを子どもにしぼり、食品トレー5枚でおみくじが引けるように考えた。同じデザインの回収ボックスを全国に設置することで、わかりづらさや見つけづらさの問題を解決。子どもたちのワクワクでリサイクルを促進し、ついでにスーパーに立ち寄る回数を増やしてもらう点にも配慮。
わかりやすいネーミングで、子どもがターゲットというのも良かったです。食品トレーの回収にはスーパーさんの協力が不可欠なのですが、そのスーパーさんにメリットがあるように考えてくれたのもうれしかったです。甲乙つけがたい素晴らしいアイデアが出そろったので、すべて合わせて会社に提案したいと思います。(冨樫氏)
マツダの持続可能性に向けた挑戦
企業の方の声
「中国5県から高校生が集まり、サステナビリティについて議論をしている姿を非常に頼もしく感じます。高校生ならではの気付きを知ることができ、私たちもとても興味深いです。地球レベルの課題解決を目指しつつも、地域の問題にも貢献できるような案をぜひ練ってほしいです。『よそがやっているから』とか、『人がやっているから』ではなく、今ある常識をうたがいながら、自分たちの価値観で正解を探ってもらいたいです」(馬渡氏)
SDGs達成に向けて、私たちにできる『クルマを通じた地域課題解決への貢献』を考えよう!
「CX-AIR サイクリングカー」
プロペラがついた蓄電できる自動車を開発。助手席にペダルがついていて、こぐと発電し蓄電ができる仕様。渋滞時や緊急時は空を飛ぶことができ、渋滞を回避できる。また、ペダルをこぐという動作で運動不足も解消。環境にも人にも優しい、「新時代のクルマのカタチ」を提案。
ミニ講演を行った際に、私たちが今後力を入れていきたいのはSDGsゴールの「3すべての人に健康と福祉を」「11住み続けられるまちづくりを」「13気候変動に具体的な対策を」だとお話ししました。その点を踏まえ、すべてをカバーする欲張ったアイデアを出してくれて非常にうれしいです。空飛ぶクルマは実際に考えられつつあり、このアイデアがマツダの空飛ぶクルマのコンセプトになりそうです。(馬渡氏)
『窓』から考えるサステナビリティ
企業の方の声
「これまで別ブロックの大会に参加したことがありますが、中国大会は初めて。新しい情報をもらさず吸収しようとする高校生の姿勢が素晴らしいですね。私たちの会社が提供しているのはおもに窓ですが、窓に関心を持つことって大人でもそうありません。それを、興味を持って議論してくれることにうれしさを覚えます。また、今回の開催地である東広島市はSDGsに対し意識が高い地域と聞いています。そのような場所で開催されることも、意義のあることではないでしょうか」(三浦氏)
これからの家づくりがどうなっていけば環境を守ることができるのか考えてみよう!そのために住まい手である私たち一人ひとりが意識するべきことを考えよう!
「家や建物に緑が少ない!!」
緑が持つ、リラックス効果や空気清浄効果、疲労回復の力に着目。そもそも住宅や建物に緑が用いられていることが少ない現状の課題をあげ、解決策として「緑を増やす」というシンプルな案を提起。緑のカーテンや観賞用植物、敷地内の植栽など、具体的な解決方法をあげた。
人がいるからこそ、緑をふやそうという提案に賛成。人と緑のバランスはとても重要だと思います。緑を増やすことで、もっと大きな課題解決につながることが多々あるのではないでしょうか。この案は、より安く、簡単に、今すぐできるという点が優れていると感じます。住まいの延長にまちがあるという視点も生かされていて、こうありたいという未来の地域の姿がしっかり描かれていると思います。(三浦氏)
発表と講評ののちは、サステナブル・ブランド・ジャパン カントリーディレクターの鈴木紳介氏から、今後のスケジュールの案内などがあり、本大会は無事に幕を閉じました。
最後に、今大会に参加した高校生や教員、イベントの共催である日本旅行のスタッフから感想が寄せられたので紹介します。
「本校は東広島市のSDGsパートナーとしても認定されており、普段からSDGs教育に力を入れています。事例紹介を交えてサステナブルな取組みについて教えてくださった企業さん、ワークショップを円滑に進めてくれたメンターの広島大学の学生の皆さん、いろいろな人と交わることができ、生徒たちにとって非常に貴重な経験になったのではと思います。他校の生徒さんたちと、共通言語であるサステナビリティについて存分に議論を闘わせることができ、大変有意義な時間でした」(新本先生)
「はじめましての他校の生徒さんたちと議論を交わし、発表まで持っていけるか、最初はとても不安でした。しかし、話し合っていくうちに打ち解けることができ、同じ志を持っているんだという気持ちで、課題解決に向けたアイデアを出し合うことができました。今後、自分にもできるサステナブルな行動を、より心がけていきたいです」(佐藤さん)
「今回、イズミグループに入って課題解決案を考えました。家の近所にもイズミの商業施設があり、普段から利用していて、いろいろな取組みをされているんだなぁと感じていました。それが実際のディスカッションテーマとなって議論でき、とても楽しかったです。未来に向けて勉強することの大切さ、目標を決めて段階ごとに課題を解決していく重要性を感じることができました」(羽田さん)
「他校の生徒さんが考える、SDGsに対してのさまざまな切り口や、多様な価値観に触れることができて良かったと思います。また、生徒たちが、企業の皆さんが普段から感じている“生の課題感”に触れられる機会はそう多くありません。実際に今あがっているような社会課題を知り、自分事として解決策を考えることができて、とても充実した時間でした」(堀内先生)
「普段からSDGsについての勉強を行っていますが、まだまだ知らない取組みや社会課題があるんだなと思いました。また、どんなに大きな課題に対しても、自分にできる小さな解決策があると感じたので、自分自身が貢献できる点をあらためて見直してみたいと思います。まずは食品トレーの回収など、できるところから行動を起こしていきたいです」(広兼さん)
「SDGsについては、これまで授業を通じて学んできました。あまり深い知識を持っていたわけではないですが、今回自分なりの考えを述べ、周りの意見も聞くことができ、すごく勉強になりました。私たちが普段暮らすまちや学校、お店などでもSDGsが意識されているのだと、あらためて感じることができました」(藤本さん)
「昨年に引き続き広島大学での開催となりましたが、今回は3点ほど新たな試みがありました。ひとつは、前回ご参加くださったイズミさん、エフピコさんに加え、地元の自動車メーカーであるマツダさん、業界全国トップシェアのYKK APさんに参加いただけたこと。これにより、今までとはまた違った視点でお話をしていただくことができました。二つ目は、高校教員の皆さんと企業さんの交流の場を設けられたこと。「学外での学びの機会の創出」というテーマで、子どもたちにとって今何が必要なのか、あらためて意識の共有を行うことができました。そして三つ目は、イズミさんとエフピコさんのコラボによる弁当を提供できたこと。イズミさんが手がける惣菜、エフピコさんが作るプラスチック容器、これらを実際に手にしながら、高校生の皆さんは今日の話を反芻することができたのではないでしょうか。ぶじ終えられた第5回も、学校と企業が連携した、非常に実りの多い大会になったと感じています」(鍋島さん)
社会を牽引する大人たち、そして未来を担う若い世代が一緒になって、社会課題とその解決策に向き合った「第5回 SB Student Ambossador 地域ブロック中国大会」。持続可能な社会の構築に向け、今、確実にバトンが引き継がれています。