教育・保育を向上させるアクションプラン
司会
より良い子育て環境や教育・保育環境を構築するために行っている取組みや、工夫されている点はありますか。
上杉
保育環境の質を向上させるために、まず私たちは十分な保育士の獲得に力を入れています。具体的には、私立保育園の保育士さんに勤続1年ごとに最大3年まで応援給付金を支給、住宅補助も行っています。インセンティブ(仕事の成果に応じて支給される成果報酬)を高めて、持続的に保育士を確保していこうというのが狙いです。市立の保育士さんに関してもテコ入れをしたいのですが構造的に難しい点が多く、確保における有効な手段を展開できていません。ここに関しては業界全体の問題かもしれません。少しずつでも、現状をより良く変える手立てを講じていきたいですね。
多賀
東広島独自のものとしては、令和3年度に「ひがしひろしま乳幼児教育・保育アクションプラン」を制定しました。これは「第2期東広島市子ども・子育て支援事業計画」において、重点施策のひとつとして位置付けている「乳幼児期における教育・保育の質の向上」のために、目指す乳幼児の姿や施策の方向性を関係者が共有し、よりいっそうの質の向上を図るために策定されたものです。目指す乳幼児の姿は「とことんあそび 豊かに育つ こころとからだ」です。
上杉
幸いにも東広島は広島大学をはじめとする複数の大学があり、研究施設も多く、教育や幼年研究を主としている先生方がいらっしゃいます。そういった専門の先生方に助言をいただきながら、どうやったら子ども主体の保育ができるのかを、皆で考えていきました。目標にもある「豊かに育つ こころとからだ」は子どもたちになくてはならないものです。SDGsはより良い未来をつくることを目指して掲げられているものですが、その未来を担うのは子どもたちです。この子どもたちが心身共に豊かに、健やかに育つことこそが、SDGsの達成に関わっていると思います。伏原先生はじめ、現場の先生方が、このアクションプランをもとにした保育を展開してくれています。
伏原
プランの中で乳幼児期に育みたい5つの力として、「感じる・気付く力」「うごく力」「考える力」「やりぬく力」「人とかかわる力」を挙げているんですね。これらの力を、遊びを通して総合的に育んでいきます。保育は環境が大事なので、園庭の土壌改良として、市内の木工会社さんから木くずをいただいて腐葉土などと混ぜて、遊具の周りに敷きました。クッション性が高くて転んでも痛くないので、のびのびと遊びに取組めています。それから、周囲の自然豊かな環境を使い、川遊びをしたり、落ち葉や木の実で遊んだりと、自然に触れる機会を多く設けています。その中で子どもたちはしっかり体を動かし、新しい発見や体験をして、挑戦したいという心や好奇心を育んでいきます。園の外に遊びに行くのは大事だと思うので、自然環境が整っているのは幸せなことだと思いますね。また、それら園の取組みを目にする中で、「不要になったタイヤがあるので遊具としてどうですか」という申し出があったり、建材会社さんが木の端し材を使ったおもちゃや家具をプレゼントしてくれたりして、大変ありがたいです。
上杉
保育所に関わりのある方はもちろんですが、そうでない方も、まちの保育や教育環境に関心を持ち、子どもたちの成長に興味を持ってくれるようになったのは、さまざまな取組みを行ってきたことで予想外に生まれたうれしい波及効果かもしれません。
個を尊重し、希望が持てる未来をつくる
司会
最後に、これから目指すまちの姿や、理想とする子どもたちの未来像があればお聞かせください。
多賀
市役所には色々な部署がありますが、こども未来部は高い意識を持った職員が多いです。その精神はSDGsの理念に通じるところがあると思うし、今回SDGsということをテーマに色々と考えて再認識できるものがありました。今後も、「安心して子どもを産み、育てられるまち」「若い世代や子育て世代が明るい展望を持てるようなまち」を目指し、諸々の取組みを積極的に行っていきたいです。目標は、“子ども真ん中社会”です。
上杉
まずは、子どもたちがのびのびと成長できるような保育環境を整えることが大切だと思います。そのような環境の中で、一人ひとりの個性を大切にし、自分に自信を持って他者を思いやれる子どもを育てていきたいです。わかり合おうとする心を持てる子どもを育んでいくことが、持続可能な社会の形成につながっていくのではないでしょうか。
伏原
先ほど話に出た「乳幼児期に育みたい5つの力」ですが、この力を育むために取組んできたさまざまなことが、実はSDGsにも関わっているんだと気付きました。リユースリサイクルといった意識づけや環境に関する学びなど、保育の中に取り入れられることも多々あるので、これらを活用して保育の幅を広げていきたいと思います。また、子どもたち一人ひとりの思いを汲んだ保育を行うことはもちろん、この子たちが大人になった時に希望を見出せる未来をつくっていくことも、私たちの役目だと思うんです。子どもの可能性、そして子どもたちの未来をつぶさないような、そんな保育を目指していきたいです。