地域共生とウェルビーイングを叶える
司会
まずは、皆さんの普段の業務内容を教えてください。その業務はSDGs達成にどのように関わっていますか。
福光
「健康福祉部」は、地域共生社会の実現に向けた取組みなどを行う「地域共生推進課」、高齢者の介護予防や生活支援など、高齢者福祉全般を扱う「地域包括ケア推進課」、介護保険料や介護サービスに関することを担う「介護保険課」、国民健康保険や国民年金に関することを担う「国保年金課」など6つの課で構成されています。「医療保健課」と「障害福祉課」については、本多さんと河本さんからご説明します。
本多
医療保健課では、健康教室や健康相談などの健康づくり・介護予防として主にフレイル(心と身体の機能が弱くなってきた状態)対策の支援、こころの悩み相談、受動喫煙防止の取組みや感染症対策などを行っています。夜間、休日の救急医療体制にも関わっています。
河本
「障害福祉課」は、障害のある方の医療や手当に関すること、各種福祉サービスに関することなどを手がけています。障害にも、身体、精神、知的とあるので、その方にとってどういった支援が必要かを考え、地域の皆でサポートし合える環境を構築しています。
福光
私たちの業務は、SDGsでいうと「3 すべての人に健康と福祉を」に最も関わりが深いのかなとも思いますが、複数のゴールに関わりがあると考えています。目指しているのは地域共生社会(世代や分野を超えて人と人とがつながり、住民一人一人の暮らしと生きがいを創出して地域を共につくる社会)やウェルビーイング(肉体的にも精神的にも社会的にも、すべてが満たされた状態)といったところなので、業務全てがSDGsの理念に通じていると思っています。
事業を通じて感じる、連携の心強さ
司会
具体的にどのようなことをされているか、詳しい内容を教えてください。
福光
地域共生総合相談窓口では、民生委員・児童委員さんと連携して、引きこもりやヤングケアラーといった悩みを抱えている家庭をサポートしています。コミュニティの希薄化が叫ばれる中で、もっと地域や周りの人に関心を持ち、自発的に動いてくれる人が増えるような、そういった意識醸成や活動を行っています。行き過ぎると監視社会になってしまうと思うのですが、適度な距離感を保ちつつ、付き合っていただければと。引きこもりについて、教育を受けている間は学校が不登校などの問題として認識してくれるので手段があるのですが、卒業と同時にそのサポートが切れてしまいます。そこからいかに社会と断絶されないように支援できるかが、私たちの大事な役目です。
河本
障害者支援に関しても、問題が見えにくいために支援体制を構築するのが遅くなってしまうことがあります。例えば発達障害は認知や脳機能の障害なのですが、ご家族が障害を受容できない場合や、周囲の理解が追いついていないことで支援が遅れ、ひいては社会に適応するのが遅くなってしまいます。早くからのサポート、そして、学校や地域、家庭など、色々なところとの協力が大事だと感じます。
本多
一人の力では解決が難しいことでも、誰かと力を合わせることで思いがけないサポートやアイデアが生まれることもありますよね。私たちはフレイル予防アドバイザー育成講座を開いているのですが、学生さんや主婦、会社員など、色々な方が参加してくださいます。それで栄養や睡眠について学習したり、地域について学ぶのですが、先日その研究発表会が行われたんです。参加してくれた方の中に薬剤師さんがいて、「ウォーキングしながら薬草を見つけるイベントはどうでしょう」と提案してくれて。非常に面白い発想だなと思って、すごく感心しました。皆で野山を歩いて、その中で薬草を見つけて、この植物は何に効用があるかとか、お話を聞きながらウォーキングするって楽しそうだなと。私たち行政の人間が考えることって健康というテーマで視野が狭いところがあると思うんですけど、そうやって新しい視点で提案いただいたことを取り入れていけば、もっと楽しく健康づくりができるんじゃないかなって考えさせられました。
福光
「楽しく」というのがいいですよね。健康づくりってどうしても“やらなきゃ”という強迫観念みたいなものがあると思うのですが、「楽しそうだから参加した、そして気付いたら健康になってた」みたいな(笑)。そういった素敵なアイデアをどんどん取り入れていくためにも、市民の皆さんのお力をぜひ貸していただきたいですね。障害福祉課では、誰かと連携することの心強さを感じたりしますか。
河本
障害福祉課では長く「農福連携」を進めていて、ここで色々な方とつながることのありがたさを感じています。農福連携とは、障害のある方などが農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現する取組みのことで、障害のある方にとっては働く喜びや収入を得ることができ、農業従事者の方にとっては担い手不足を解消できるwin-winの事業です。非常に素晴らしい内容なのですが、農地近隣にトイレがなく、遠くまでお手洗いに行かなければならないため、たびたび作業が中断してしまうという課題がありました。そこでこの課題を解決するためにトヨタさんが立ち上がり、移動できるトイレを開発したんです。トイレラボと名付けられたこの取組みもまた、企業さんと連携した心強いサポートの例かなと感じます。また、この事業で収穫できた野菜を販売する「ノウフクマルシェ」を月に一度市役所で開いているのですが、いつもたくさんの方が立ち寄ってくださいます。また、本市と地域活性化包括連携協定を締結しているイズミさんのご協力をいただき、ゆめタウン東広島店のフードコートの一画でノウフクマルシェを開催することができました。ここでも連携の心強さを感じています。