建物や公園の整備で暮らしやすく
司会
皆さんが所属している課で進めている取組みや、それに伴う課題、目指す未来像などがあれば教えてください。
河野
営繕課は市有施設の増築や改築、改修工事などを引き受けています。学校や保育園、地域センター、集会所など、市有建築物すべてを請け負っているため50~60億規模の事業になります。そんな市有施設の大きなテーマが長寿命化です。これまで色々な建物を手掛けてきましたが、近年では「スクラップアンドビルドではいけない、今あるものをどう長く使っていこうか」というところに焦点をシフトしています。現在進めているのは、西条中学校と東西条小学校の改修工事。ただ改修するだけでなく、バリアフリーなど現状必要と言われている機能を有するような工事を行っています。特にトイレのバリアフリー化は要望が多いです。また、東日本大震災以降は耐震工事の必要性が強く叫ばれ、以降優先的に工事を進めてきました。お陰で一定規模以上の市有建物における耐震工事はほぼ完了しています。少し前の話にはなりますが、シックハウス症候群などが問題になったあたりから、化学物質を発散するような材料は使用しないなど、環境配慮も徹底しています。長寿命化を含め、施設の工事や見直し計画は、各施設で立てるようにお願いしています。
竹江
市有建物はすべて合わせると700~800ぐらいあるので、すべてを営繕課が直接請け負っているわけではないんです。各施設の計画は各々に委ねています。ちょっと面白いところでは、消防署(高屋分署)の建設に近畿大学の学生さんが関わっているんですよ。それから、広島大学の公共交通網形成事業。中央口のところに待合室所を兼ねた交通結節点があるのですが、この場所の新築工事を広島大学大学院生さんのアイデアをもとに進めています。学生さんからは4案を出してもらい、公開プレゼンテーションを行いました。そこで採用された案が、ボロノイという図をベースに木の葉が揺れるようなイメージでつくられたデザインで、今まさにかたちになろうとしています。
河野
建物って、そこに関わると不思議と愛着がわくんです。学生さんたちにはこれからも大切に使ってもらいたいと思うし、そこからまちに対する愛着が生まれるといいなと思います。あとは、2022年7月にオープンした「道の駅 西条 のん太の酒蔵」にも色々な工夫が凝らされています。外観はなまこ壁や赤瓦で地域性を表し、ユニバーサルデザインを取り入れているので、色々な表示が見やすく使いやすいつくりになっています。
竹江
誰もが使いやすい施設という意味では「5 ジェンダー平等を実現しよう」の達成に関わる部分もあると思うし、学生さんの話だと「4 質の高い教育をみんなに」や「17 パートナーシップで目標を達成しよう」の実現に関係する部分も大いにあるんじゃないかと思います。
司会
都市整備課では、どのような取組みが進んでいますか。
檜山
色々ありますが、大きく注目を集めているのが「公園の里親制度」です。ホームページなどを通じて公園の里親を募集し、市民の方に維持管理していただく制度で、地域住民や企業など、趣旨に賛同する人たちが参加してくれています。行政側からは花の苗や清掃道具を提供させていただき、参加者たちが整備や掃除を自分たちの手で行います。地方の優れた取組みということで、新聞やラジオなどにも取り上げていただきました。
竹江
檜山次長からも、公園への愛を感じています(笑)。
檜山
以前、市民ポータルサイトを通じて公園についてのアンケートを行ったんですが、過去一番の回答率をいただきました。それだけ市民の皆さんにとって関心の高い場所なんだと痛感しましたね。東広島は若いファミリー層が増えているので、「歩いて行ける公園に遊具が少ない」といった、子育て世代からの声が最も多かったです。市民ニーズはどんどん変化していくものなので、そこにどう対応するかが課題だと思っています。ちなみにニーズもまちまちで、例えばある子育て世帯にとっては「もっと遊具を」という意見でも、同じエリアの高齢者にとっては「ボールが飛んできて困る」というような意見になったりもするんですよ。皆さんに等しく課題解決するのはなかなか難しいことだとは思うのですが、まずは地域の特性を見極めて、その地域に合った公園を整備することが、解決につながるのかなと考えています。あとは、災害時の避難場所になったりもするので、防災力を高めたりとか。
司会
議会などでは、公園内でカフェやマルシェといったほか市町の活用例が挙がったりもしますよね。既成概念にとらわれない活用法というのも今後必要になってくるかと思うのですが、そのあたりはどうでしょう。
檜山
東広島で最も利用されているのが西条中央公園等の都市公園だと思うんですが、賑わいの創出という意味で、市民の皆さんから色々なイベントの開催要望があり、できるだけ応えるようにしています。ただ、どうしてもある程度のルールが必要になってくるので、そのあたりを共有できればと思いガイドブックを作成中です。「花火をしてもいいの?」とか「バーベキューをしても大丈夫?」とか、わかっているようでわかっていない公園のルールを、一冊に可視化しようと考えています。あと、公園をイベントなどで使用するにあたり、「手続きが煩雑」という声もよくいただいていたので、ワンストップで行えるシステムに移行しています。
竹江
皆が気持ちよく使える場であり続けるために、マナーやモラルの向上も同時にできたらいいですよね。そして行政と市民と協働して、笑顔や賑わいが溢れる場所にしていきましょう。
司会
都市計画課で現在進めていることや、それに伴う課題はありますか。
土本
令和12年を目標とする都市計画に関する基本的な方針「第3次東広島市都市計画マスタープラン」を策定しまちづくりを進めていますが、人口、環境、産業など、地域ごとに色々な課題があると痛感しています。どれもが紐づいていることなので、一言で「これが課題」と表すのは難しいですが、エリアごとに目指す姿が違うため、土地の特色をどう生かしていくかが今後求められてくると考えています。目標はコンパクトなまちづくりです。
竹江
以前は「市全域でより良く変わっていこう」という風潮でしたが、今は「人口の増えているところと減っているところ、もっと言えば海側の安芸津と山側の豊栄では目指す姿が違う」ということを認識したうえでまちづくりを進めています。あと、豪雨災害以降、防災に対する意識も大きく変わりました。市街地にも災害リスクをはらんでいるところがあるので、居住地からはずす作業を進めていかねばなりません。さらに賑わいづくりに関しては、「ALC’mon(アルカモン)」の社会実験にも注目してほしいところです。2021年から始まった取組みで、ブールバールや公園に屋台やキッチンカーが登場し、キャンドルイベントなども開催されています。今後も続けていきたいと思っているので、まちがどのように変化していくか期待しています。
「住んで良かった」と思える幸福なまちに
司会
最後に、SDGsについて感じることや、まちへの思いがあれば聞かせてください。
河野
営繕課の観点から言うと、やはり市民の皆さんに「いいね」って言ってもらえる建物をつくりたいです。そういった建物のあるまちが、ひいては「住み続けられるまち」につながると思うので。今は西高屋駅の自由通路の工事が進んでいるので、こちらも良いものになるよう全力を尽くします。
檜山
公園を核にしたエリアマネジメントを進め、行政と市民とが協働する動きをつくっていければと思います。里親制度を活用した維持管理や誰もが安全・安心に利用できる公園のあり方を、今後も展開していきたいです。
土本
先ほどお話しした「第3次東広島市都市計画マスタープラン」に基づいたまちづくりを進めていきたいと考えています。また、立地適正化計画に防災指針を追加することとしており、安全・安心なまちづくりを目指して、業務を進めていきたいですね。
竹江
個性豊かな次長がそろっている都市部で力を合わせて頑張っており(笑)、目標はもちろん「住み続けられるまちづくり」ですが、SDGsという視点だけにとらわれるのでなく、最終的に皆さんが笑顔になれるよう、「このまちに住んで良かった」と感じてもらえるようにしていきたいです。市民の皆さんには、そういったところで東広島というまちを評価してもらえたらと思います。