水道局の業務で達成するSDGsとは
司会
まずは水道局が担う役割について教えてください。皆さんが普段行っている業務内容は、SDGs達成にどのように結びつくと考えていますか。
西田
水道局は、市や県の浄水場で作った水を住民の皆さんに届けるのが役割です。水を利用する人たちから水道料金を徴収したり、水道施設や水道管を整備・修繕し、維持管理を行っています。局内には3つの課があり、水道事業の運営や料金徴収に関わる「業務課」、配水管や配水池などの新設・更新、各種計画の策定を行う「工務課」、浄水場の運転管理や配水管・ポンプ所などの維持管理、給水装置工事の審査、検査、水道メーターの管理などを行う「給水課」に分かれています。
廣川
SDGs達成については、すべての人に安全安心な水を届けることが「6 安全な水とトイレを世界中に」のゴールに直結していると考えています。また、業務を通じて人々の健康的な生活を確保する側面から「3 すべての人に健康と福祉を」、持続可能な都市および人間居住を実現することから「11 住み続けられるまちづくりを」にも深く関わっていると思っています。
山岡
生涯学習課主催の出前講座を市民向けに行っていることや、学校などに向けた浄水場の見学、オンライン授業にも携わる意味では「4 質の高い教育をみんなに」、ポンプ所の更新の際に省エネルギー設備へと更新していることから「7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、水道局の窓口に翻訳機を設置するなど多言語に対応している面では「10 人や国の不平等をなくそう」にも寄与しています。また、浄水処理過程で発生するろ過砂の再資源化については「12 つくる責任 つかう責任」に、高圧受電において市内6施設で温室効果ガス排出量の少ない電力を使用することにおいては「13 気候変動に具体的な対策を」にも貢献しており、水源である川の水をキレイに保つこと、水の循環で考えると「14 海の豊かさを守ろう」にもつながると言えそうです。
企業団を通じて課題の解決を図る
司会
水道局が考える、水道事業についての課題はありますか。課題の解決方法についても教えてください。
山岡
課題は大きく分けて3つあります。ひとつは、水の安定供給や危機管理体制の強化について、2つ目は老朽化した施設や管路の更新について、そして3つ目が技術職員の確保と技術の継承です。
廣川
1つ目の、水の安定供給と危機管理体制の強化についてですが、東広島市は自己水源が少なく、広島県から9割以上水を購入している状況です。また、今後の水道事業において、人口減少に伴う給水収益の減少や施設の老朽化に伴う更新費用の増加などにより、経営環境の急速な悪化が見込まれています。これらの課題を解決し、安全安心な水を適切な料金で安定供給する水道システムを構築するため、「広島県水道広域連合企業団」に参画いたしました。これは広島県と14市町で設立した地方公共団体で、令和5年度から事業を開始する予定です。横のつながりができることで各市町における悩みを共有し、水源の確保や技術力の向上などさまざまな効果が見込まれています。
山岡
過去には自然災害で浄水場が浸水して、断水になりかけたこともありました。計画では福富に広域浄水場が整備されることになっており、これにより瀬野川浄水場と福富広域浄水場の2系統から送水ができるようになり、水の安定供給や危機管理上の課題が改善できると考えています。同時に、老朽化した塩化ビニル管の管路も優先して更新していかなければなりません。耐震性がなく漏水しやすい素材なので、強靭なダクタイル鋳鉄管や水道配水用ポリエチレン管に更新していくという作業も進めています。
西田
安全な水の供給という意味では、水質検査の基準を厳守した水の提供も絶対です。それぞれの水系の管末で、毎日残留塩素濃度の測定を行い、水道法で定められた最低残留塩素濃度を維持できているか確認しています。もちろん安全だけでなく、濃度が高くなりすぎないよう管理することで、よりおいしい水をお届けしています。
廣川
次に2つ目の老朽化した施設や管路の更新についてですが、先ほど山岡課長が述べた福富広域浄水場を整備することで、既存の老朽化した浄水場を更新せずに廃止することができます。これにより、施設更新にかかる労力やコストを大きく削減できるようになります。管路の更新については、DB方式(デザインビルドと呼ばれる一括発注方式)の採用など新しい手法も取り入れながら、管路更新と合わせて耐震化の進捗アップを図っていきたいと思っています。
山岡
そして3つ目の技術職員の確保と技術についてですが、局の技術職員は、40代以上が多く若手職員が手薄です。市全体としても技術職員が不足しており、これはどこの市町も同様だと聞きます。市民生活のベースを築く、インフラ整備に関わるということにやりがいを見出し、若い人がどんどん飛び込んできてほしいと願ってはいるのですが不足しているのが現実です。
廣川
そういった部分も、企業団を通じてほかの市町と協力して課題に取組んでいきたいところですね。今後、企業団では独自の技術職員採用を検討していると聞きます。今後、民間企業での経験やノウハウを有した人材が集まったり、そういう人たちが各市町に派遣されることで、ある程度、技術力の共有ができるのかなと思っています。また、定期的な技術研修の実施も予定されているので、そのような場を活用して、人を育て、水道に関する技術を継承していきたいですね。
一人ひとりがサステナブルな行動を
司会
SDGsを意識して、普段皆さんが実行されていることは何ですか。また、私たちが日常で水を使う際に気を付けたほうがいい点はありますか。
西田
SDGsを意識して日常で行っていること…。うーん、すぐ食べるものは手前取りを実践して購入することぐらいですかね(笑)。ただ、局内においては、本市がSDGs未来都市に選定されたことで、自分たちが行っている業務が、地球環境や市民の安全安心な暮らしを支えていると、よりしっかり自覚できるようになった気がします。
山岡
私は職場でも家でもそうですが、電気のつけっぱなし・水の出しっぱなしが気になります。自分自身はもちろん気を付けているし、家族がつけっぱなし・出しっぱなしにしていたら注意します。
廣川
電気のつけっぱなしは、私も気になります。誰も使っていない庁舎の電気がついていたら、片っ端から消してまわってますよ(笑)。それから私たちは、水を使うということに関しては非常に敏感です。大切にする意識は当たり前のように職員皆が持っていますし、水道局の目の前の黒瀬川がちょっと濁ってたりしたら、浄水場の水源になっており、取水できなくなるため、「あれ、原因何なの。工事か何かしてるの」って、すぐ気になりますね。水道の水のもとになっているのは河川の水であり、雨などの自然がもたらす恵みなので、市民の皆さんには河川を含めた自然環境をきれいに保つという意識を持ってもらえたらありがたいと思います。
西田
それから、本市の地域性でいうと、やっぱり学生さんが多く住むまちなので、それに伴う引っ越しも多いんですよね。開始届の提出や中止の連絡は、必ず行っていただきたいです。あと、冬の寒い時期に注意していただきたいのが水道管の凍結対策。過去の大寒波の際にはあちこちで水道管の凍結による漏水が発生し、配水量が増えて、水の供給が足りなくなりそうな事態が発生しました。
山岡
凍結対策は、外に露出している蛇口や管、水道メーター周りにタオルなどを巻いてビニール袋をかけて冷えないようにするのがおすすめです。水を出しっぱなしにするという方法もありますが水道代もかさんでしまいますし、ホームセンターへ行けば凍結対策用の電熱線なども販売していますよ。
西田
気付かず管が割れて、漏水しているということもありますからね。家の中で漏水すると家を傷めることにもなりますし、高額な水道代を支払うことになってしまいます。水道メーターの検針時に漏水の疑いを伝えられた場合は、点検修理をしていただきたいと思います。漏水の有無をご自身で確認したい時は、家じゅうの蛇口をしめた状態で、水道メーターのパイロット(赤いプラスチックがついたシルバーの丸い部品)が回転していないか確認してみるといいですよ。
廣川
水という資源は無限ではなく、有限のものであり、人々の生活に必要不可欠なものです。そしてSDGsは2030年の達成を目指したものではありますが、水道事業は永久に継続していかなければなりません。同じ意識を皆で持ちながら、安全安心な水を供給するための一つひとつの取り組みを、これからも確実に行っていきたいですね。