地域のサポートを受けSDGs教育を展開
司会
吉川小学校ではどのようなSDGs学習を取り入れていますか。また、その学びを通して、子どもたちや周囲に何か変化はありましたか。
田中(辰)
先ほど述べた生活科と総合的な学習の時間を中心に、地域の特色を生かした学習にSDGsの視点を入れて取組んでいます。その中でまちに目を向けて、課題を洗い出し、吉川の未来のために自分たちに何ができるかを探る学習を行います。これらを通して、「吉川の未来を創る人材」、すなわち「持続可能な社会の創り手」として、必要な資質や能力を育もうと考えています。
田中(涼)
昨年は研究発表会を行ったのですが、その中で、1年生であれば落ち葉やどんぐりなど秋の素材を使ったおもちゃづくり、2年生は地域の野菜名人に習う野菜づくり、3年生は「ふるさと吉川を楽しくし隊!~吉川元気プロジェクト~」と題し、地域の人と関わりながら吉川の特色や魅力を調べる学習を行いました。さらに4年生は古河川(ふるこうがわ)の水質や自然を守る取組みを考え、5年生は米づくりを通して吉川の農業を研究、6年生は「Let’s produce YFGs~吉川の未来のために今できること」というタイトルで、吉川の歴史を調べたり、地元の人にインタビューをしたりし、まちの未来に向け自分たちができることは何かを考えました。ちなみに6年生の学習内容に出てくる「YFGs」は「SDGs」にかけた造語です。子どもたち自身で考えたもので、「ヨシカワフューチャーゴールズ」と読みます(笑)。ゴールに対応するイラストも、子どもたちが考えて描きました。学習内容の大枠は決まっていても、基本は子どもたちが自分で考えて、自発的に取組んでいます。
田中(辰)
本校の伝統として、児童主体の学習に取組んでおり、教員がやらせるというよりも、子どもたちが自ら考えて動くことが多いです。例えば4年生の川の学習については、例年4年生が川について学ぶようなカリキュラムになっているので、下の学年の子たちはとても楽しみにしているんですね。「自分たちも来年は古河川に行けるぞ」と。そうした中で自然と興味や関心を育んでいます。ほかにも全校児童で学校田の田植えや稲刈り、不要な服を回収して難民に送る「服のチカラプロジェクト」などに、また学年に応じて竹炭づくり、植樹体験活動、高齢者疑似体験活動などにも取組んでいます。
田中(涼)
地域の方にご協力いただくことはもとより、例えば1年生のおもちゃづくりだったら児童が保育園児に教えたり、古河川の調査だったら市役所の方の力を借りたりと、色々な人たちと連携をしています。「吉川という地域を知らない」と話す若いお兄さんお姉さんがいることを知った子どもたちが、大学生に向けて吉川の魅力を伝えるという学習も行っています。
田中(辰)
地域の方々にはいつも大変なご協力をいただき、本当に感謝しています。年度はじめに「吉川の学びを創る会」というコミュニティで各学年の学習予定を説明して協力をお願いしているのですが、「子どもたちのためなら」と、すすんでお手伝いを名乗り出てくださいます。また、保護者の方たちには本校の教育について定期的にアンケートを行っているのですが、「子どもは学校での体験活動や地域と触れ合う学習に楽しみながら取組んでいるか」という問いに、9割以上の保護者から「そう思う」という回答をいただいています。さらに、教育研究会で他校の先生方から「吉川小で育つ子どもたちは、地域を誇りに思い、吉川小で学んだことをもっと広い世界へつなげていくのだろうと感じた」というような感想もいただきました。これらはすべて、地域の方たちのお力を借りながら、普段の学習が結実した賜物だと感じています。
田中(涼)
子どもたちは学習を通し、SDGsという言葉やその概念が随分身近になったようで、「紙を無駄にしないように使おう」「給食は残さず食べよう」というような声を自然と発するようになりました。全校で行っているSDGs川柳にも、子どもたちの目線で考えられた素晴らしい作品が並び、とてもうれしく思っています。