リレーコラム

県内の市町で初選定のSDGs未来都市として ~学校教育部~

学校教育部

公開日:2022年12月

SDGsの学びをみずからの行動変容に
内閣府が認定する「SDGs未来都市」(SDGs達成に向け、経済・社会・環境の三側面の総合的取組みで、新たな価値を創造する提案を行った自治体を認定する制度)に、県内の市町で初めて選定された東広島市。17のグローバル目標と169の具体的なターゲットを掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を達成するため、官民一体となって積極的に動いています。東広島市内の学校でも、各校が工夫を凝らしたSDGs学習に着手。今回は吉川小学校の校長と担当教諭に、どのような学習を行っているか教えてもらいました。
吉川小学校 校長
田中 辰貴
吉川小学校 教諭
田中 涼太

小規模校の良さを備えた吉川小学校

司会
まずはじめに、吉川小学校の特色を教えてください。
田中(辰)
本校の学校教育目標は、「強く正しくうるおいのある子ども」です。「一人一人に生きてはたらく力を育てる」ため、子どもたちの故郷である吉川のまちを「地域まるごと学びのステージ」と捉え、地域の方々との連携を大切にしながら、生活科と総合的な学習の時間を中心に、自然豊かなまちの特色を生かした学習に積極的に取組んでいます。また、本校は東広島市の小規模特認校制度の対象校であり、現在全校児童61名のうち、約1/3にあたる19名が、本校の教育活動に賛同して本来の校区外から通ってきてくれています。
田中(涼)
私はこちらの学校に赴任して、3年目になります。兵庫県豊岡市の出身で、以前も豊岡で小規模校に勤めていたのですが、縁あって東広島に移り住むことになりました。子どもたちは皆、吉川の地域が大好きで、地域とのつながりが深い学校だなと感じています。小規模校であるがゆえ、児童一人一人が主体的に学習に取組んでいるところが素晴らしいです。
田中(辰)
皆に目が行き届いて丁寧な指導ができるのが、小規模校ならではの良さですよね。また、人数が少ない分、学年を超えた交流も生まれます。1年生から6年生までを混ぜて分ける「縦割り班」で活動をすることも多いため、自然と仲良くなれます。

地域のサポートを受けSDGs教育を展開

司会
吉川小学校ではどのようなSDGs学習を取り入れていますか。また、その学びを通して、子どもたちや周囲に何か変化はありましたか。
田中(辰)
先ほど述べた生活科と総合的な学習の時間を中心に、地域の特色を生かした学習にSDGsの視点を入れて取組んでいます。その中でまちに目を向けて、課題を洗い出し、吉川の未来のために自分たちに何ができるかを探る学習を行います。これらを通して、「吉川の未来を創る人材」、すなわち「持続可能な社会の創り手」として、必要な資質や能力を育もうと考えています。
田中(涼)
昨年は研究発表会を行ったのですが、その中で、1年生であれば落ち葉やどんぐりなど秋の素材を使ったおもちゃづくり、2年生は地域の野菜名人に習う野菜づくり、3年生は「ふるさと吉川を楽しくし隊!~吉川元気プロジェクト~」と題し、地域の人と関わりながら吉川の特色や魅力を調べる学習を行いました。さらに4年生は古河川(ふるこうがわ)の水質や自然を守る取組みを考え、5年生は米づくりを通して吉川の農業を研究、6年生は「Let’s produce YFGs~吉川の未来のために今できること」というタイトルで、吉川の歴史を調べたり、地元の人にインタビューをしたりし、まちの未来に向け自分たちができることは何かを考えました。ちなみに6年生の学習内容に出てくる「YFGs」は「SDGs」にかけた造語です。子どもたち自身で考えたもので、「ヨシカワフューチャーゴールズ」と読みます(笑)。ゴールに対応するイラストも、子どもたちが考えて描きました。学習内容の大枠は決まっていても、基本は子どもたちが自分で考えて、自発的に取組んでいます。
田中(辰)
本校の伝統として、児童主体の学習に取組んでおり、教員がやらせるというよりも、子どもたちが自ら考えて動くことが多いです。例えば4年生の川の学習については、例年4年生が川について学ぶようなカリキュラムになっているので、下の学年の子たちはとても楽しみにしているんですね。「自分たちも来年は古河川に行けるぞ」と。そうした中で自然と興味や関心を育んでいます。ほかにも全校児童で学校田の田植えや稲刈り、不要な服を回収して難民に送る「服のチカラプロジェクト」などに、また学年に応じて竹炭づくり、植樹体験活動、高齢者疑似体験活動などにも取組んでいます。
田中(涼)
地域の方にご協力いただくことはもとより、例えば1年生のおもちゃづくりだったら児童が保育園児に教えたり、古河川の調査だったら市役所の方の力を借りたりと、色々な人たちと連携をしています。「吉川という地域を知らない」と話す若いお兄さんお姉さんがいることを知った子どもたちが、大学生に向けて吉川の魅力を伝えるという学習も行っています。
田中(辰)
地域の方々にはいつも大変なご協力をいただき、本当に感謝しています。年度はじめに「吉川の学びを創る会」というコミュニティで各学年の学習予定を説明して協力をお願いしているのですが、「子どもたちのためなら」と、すすんでお手伝いを名乗り出てくださいます。また、保護者の方たちには本校の教育について定期的にアンケートを行っているのですが、「子どもは学校での体験活動や地域と触れ合う学習に楽しみながら取組んでいるか」という問いに、9割以上の保護者から「そう思う」という回答をいただいています。さらに、教育研究会で他校の先生方から「吉川小で育つ子どもたちは、地域を誇りに思い、吉川小で学んだことをもっと広い世界へつなげていくのだろうと感じた」というような感想もいただきました。これらはすべて、地域の方たちのお力を借りながら、普段の学習が結実した賜物だと感じています。
田中(涼)
子どもたちは学習を通し、SDGsという言葉やその概念が随分身近になったようで、「紙を無駄にしないように使おう」「給食は残さず食べよう」というような声を自然と発するようになりました。全校で行っているSDGs川柳にも、子どもたちの目線で考えられた素晴らしい作品が並び、とてもうれしく思っています。

一人一人ができることを考えて行動を

司会
最後に、これらの学習を通じ、子どもたちにどのような大人になってほしいと考えていますか。理想像や目指すビジョンがあれば教えてください。
田中(辰)
SDGsを他人事ではなく自分事として、「自分に何ができるのか」を考えていってほしいです。自分の地域に誇りを持ち、地域に目を向け、その中で課題を見つけ出し、解決のために何ができるかを考え、実践できる大人になってほしいと考えています。これまでの学びを、自らの行動変容につなげていってほしいですね。
田中(涼)
これまでSDGs学習を行ってきて、学習内容が多岐にわたって膨大になっていく中で、新しいSDGs学習を前面に押し出すのではなく、現在学習していることとSDGsを関連付けて指導していくことが大事なのかなと感じました。そのほうが、より効果的・効率的なのではないかと。学校の中でSDGsとの関連を意識しながら行動することで、家庭などでの日常生活に戻っても、SDGsとのつながりを自然と感じてくれるのではないかと期待しています。最終的にはSDGsのゴールを達成することが目的なのかもしれませんが、達成に向けて、一人一人ができることを考えて行動することが大事なんじゃないかと思います。先程校長先生がおっしゃったように、小さなことでも自分にできることを見つけ出し、行動できる大人になってほしいですね。
田中(辰)
本校は冒頭にも述べたように、東広島市の小規模特認校制度の対象校であり、学区外から通う児童が複数名いるんです。子どもたちは転校生に慣れており、すぐに打ち解けるような雰囲気があります。中には大規模校に馴染むことができず、本校に転校してくる児童もいるのですが、「吉川に来れて良かった」と笑顔を見せてくれるようになると、教員として非常に胸が熱くなります。SDGsには「誰一人取り残さない世界の実現」という大切な理念がありますが、本校の児童たちには、まさに多様性を尊重する度量が備わっているのではないかと感じます。今後も絶えず、「取り残されている人はいないか」を考え、「誰一人取り残さないよう」行動できる人になってほしいと願います。そのために私たち教員も、互いの違いを受け止めて、理解し、お互いの最大公約数ともいえるような最適解を探し出して、うまく折り合いをつけていくような資質・能力を育めるよう努めていきたいと思います。