暮らしのハード面を整える建設事業
司会
はじめに、普段どういった業務をされているのか、構成と役割を教えてください。また、建設部の業務内容はSDGs達成にどのように関わっていると考えていますか。
阪垣
建設部は6つの課から成っていて、部内の統括や公共施設管理をする「建設管理課」、市道や農道などの新設や改良をする「道路建設課」、道路や橋梁などの維持修繕を行う「維持課」、公共事業に係る用地取得および補償、地籍調査などを担当する「用地課」、河川や港湾の計画および工事、農業用施設に関する工事などを行う「河川港湾課」、災害復旧事業に係る計画、工事や情報発信をする「災害復旧推進課」で構成されています。災害復旧推進課に関しては、平成30年豪雨を機に新設された課です。
桧山
全体的には「11 住み続けられるまちづくりを」のゴール達成に寄与していると思うのですが、例えば農道や林道を整備するという側面からは「9 産業と技術革新の基盤をつくろう」に関わる部分もあるかもしれません。ひとつだけではなく、色々なゴールに関わっていると思います。
武田
整備を行う上で自然環境に優しい素材を用いていることを考えると「12 つくる責任つかう責任」に係る部分もあると思うし、公共交通機関などのバリアフリー化や、子ども、高齢者、障がい者など、誰にでも優しい歩道や道路設備をつくることにおいては「16 平和と公正をすべての人に」に当てはまる部分もあるのかもしれません。ガードレールやカーブミラーの設置など、事故が多いところはどこなのか警察と協議したり、通学路の危険箇所について教育委員会と話し合ったりもするので、私たちの仕事は色々な機関との連携が必要です。そういった意味で「17 パートナーシップで目標を達成しよう」というゴールにも関係していると言えます。
桧山
ちなみに、JICAが実施している公務員を対象にした開発途上国の研修において、講義を行ったりもしています。開発途上国の道路維持管理の向上にも貢献できているので、国際的なパートナーシップにも寄与していますね。
土木工学がまちの土台をつくる
司会
まちのインフラを整備するにあたっての、課題や解決策を教えてください。また業務を遂行するにあたり、どのような思いで臨まれていますか。
桧山
課題は色々とあり、地域によって異なっています。例えば過疎が進んでいる地域では人手不足による問題が浮上しています。市道や農道整備には定期的な除草作業などが必要になるんですが、すべて行政で請け負うとコストがかかるため、ある程度は地域住民やボランティアの方にお願いをしているんです。けれど、近年では山間部などのエリアで過疎と高齢化がますます進み、作業を担える人材がいません。現状は防草シートを使ったりコンクリート舗装をして、人の手がかからない整備でカバーしています。
武田
中心部では、逆に人口増加による課題がありますね。もともと東広島はクルマに依存している傾向があるのですが、中心部で皆がクルマを使用すると渋滞を引き起こすんです。また、クルマの排気ガスによるCO2の増大も懸念されます。まちが今後どのように変わっていくのか、ある程度予測を立てながら道路計画や整備を行っていくのが大事なのですが、このあたりは交通工学とか都市工学とか、専門に研究をされている大学の先生方のお力を借りたいところです。
阪垣
大学の知見を借りたいということにおいては、防災の面も同様です。災害復旧推進課では平成30年豪雨災害の復旧工事が予定より遅れている状況です。90%以上は完了しているのですが、ただ復旧させるのでなく、防災の観点から工事を進めることが大事だと考えています。今までは標準的な工事をしてきましたが、それではいけないんじゃないか、標準でおさまらない部分もあるんじゃないかと皆が思い始めていて。東広島の地形や地質、気候条件など、色々なことを加味して工事や整備を進めることが、防災力アップにつながると考えています。このあたりの視点は、大学の先生方のご協力をぜひいただきたいですね。
桧山
ほかにも、道路や河川などの施設整備が進むにつれて、管理する施設の数が増加し、老朽化も進行していることから、維持管理に要する費用も年々増えています。すべての施設の修繕方針を定め、最少の経費で最大の効果を発揮しなければなりません。部局でのマネジメントがより重要になってくるんじゃないでしょうか。
阪垣
われわれがやっていることは、「土木工学」という学問がベースになっているんですね。土木工学という言葉だけを見ると木や土を扱う建設系を思い浮かべると思うのですが、英語だと「civil engineering」と表記されます。直訳すると「市民工学」です。私たちはもともと土木の学問意義に面白さや多様性を感じ、この世界に入りました。建設会社やコンサルタントという選択肢もありましたが、道路だけ、河川だけに特化するのではなく、計画や工事など、丸ごとまちづくりに関わりたくて市役所を選んだんです。その原点を忘れず、市民生活を根底から支えているという誇りを持って、業務に当たりたいと思っています。
桧山
土木工学の話にも似ているのですが、生活や産業活動の基盤となる施設を指す「インフラ」という言葉は英語で「infrastructure」と表記し、直訳すると「下部構造」という意味になります。私たちのしていることは裏方ですが、まちの基盤となる土台そのものをつくっています。しっかりとした土台がなければ、いくら上に良いものをつくろうと思っても成り立ちません。そんな重要な部分を担っているという責任と覚悟を持ちたいですね。
武田
橋梁や道路といった大きなものから、過疎エリアの水路といった小さなものまで、私たちは色々なインフラを整備しています。大小に関わらずどちらも大切であることに違いはなくて、そしてどちらの仕事にも「ありがとう」という言葉がついてきます。感謝された時、「この仕事をしていて良かったな」とつくづく思うし、「うれしい」「やって良かった」という気持ちを、これからも変わらず持ち続けて業務に邁進したいです。