施設の維持管理と職員の意識向上
司会
まずは、お二人の普段の業務内容と、それがSDGs達成にどう関わっているかを教えてください。
片岡
私たちが所属する財務部には、財政課、管財課、市民税課、資産税課、収納課の5つの課があります。財政課は部の総括事務に関することや財政の計画・調整に関すること、管財課は庁舎や公共施設等の維持・管理などに関すること、市民税課、資産税課、収納課の3つは字の通りそれぞれの税にまつわる管理や賦課などについてです。
若山
SDGsに関して言えば、一番わかりやすいのは庁舎や出張所といった、所有建物の維持管理についてではないでしょうか。太陽光発電の導入や、蛍光灯からLEDへの入れ替え、貯水タンクを設置して雨水を活用するなどしています。
片岡
庁舎に関しては建て替えがひとつのきっかけになりましたが、福富支所など早くから太陽光発電を導入しているところもありますね。こちらは市町村合併する以前から、単独で取組んでいたようです。
若山
庁舎を長く大切に使うことはもとより、自然エネルギーをうまく取り入れて職員全体のSDGsの意識を高める狙いもあります。以前からの取組みになりますが、来庁者のある部署以外はお昼休みは消灯を行っていますよ。
片岡
私たち行政の人間が、そのような動きをしていることを見せる姿勢が大切なんじゃないかなと思います。市民の皆さんに、「東広島はSDGsに早くから取組んでる」と感じてもらい、一緒にその機運を高めていけたらいいなと考えています。皆さんの目に留まりやすい公用車に関しても、何台かはハイブリッド車を使用しており、今年10月に水素車が1台導入される予定です。
若山
ほかに皆さんの目に留まるとしたら、庁舎内の食堂でしょうか。今年4月から新しい業者さんが運営し、地元産ジビエ「栄肉」を使った料理を提供しています。もちろん一般市民の方の利用もOKで、ランチタイム以外にカフェ利用もできますよ。開かれた庁舎、開かれた市政というイメージを持ってもらえたらうれしいです。
片岡
庁舎や施設管理に関することは、SDGsゴールでいうところの「7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に係る部分もあると思うし、税に関することは「10 人や国の不平等をなくそう」に係る部分もあると思います。それらをすべてひっくるめて、「11 住み続けられるまちづくりを」というゴール達成に寄与していきたいですね。
課題解決にひとつずつ取組む
司会
庁舎や公共施設の維持管理に関して、またそのほかの業務について、課題はありますか。それらを今後、どのように解決しようと考えていますか。
片岡
公共施設が抱える課題としては、修繕・更新費用及び管理費の増加、耐震性能の不足や経年劣化に伴う安全性の低下、偏在や重複による行政サービスの格差、施設に対する市民ニーズの変化、将来的な利活用方針の未整備といったところがあげられます。東広島の人口は一貫して増加基調ではありますが、将来的には緩やかに減少するのではと予測されています。国全体で進む少子高齢化の波が、私たちのまちにも影響するだろうことは十分に考えられます。中心部に近い地域を除いては、人口減少がこれから顕著になってくるのではないでしょうか。そういったことを背景に、不要な施設が出てくるだろうこと、それらの施設に係る維持管理費、あるいは撤去費用をどのように確保していくかの課題は現状でも悩ましいところです。
若山
市町村合併前に賑わっていたエリアでも、過疎が進みつつあるところは多いですね。かつて人が多くいた時代に必要とされ、建てられた施設がいくつもあります。現状不要となった財産をどう利活用していくかは大きな課題です。
片岡
施設の維持管理に関しては、長期的な視野と短期的な視野が必要だと思うんです。例えばその施設が必要か不要かの是非や維持に係る財源確保は長期の視野で、耐震工事やバリアフリー化などすぐに対処が必要なものは短期の視野で、それぞれのエリアに見られる課題を洗い出して、ひとつずつの解決に乗り出すのがわれわれの仕事だと考えています。
若山
私たち行政の力だけでは難しいことでも、市民の皆さんの力で解決できた事例もあります。例えば統廃合になった学校跡を活用して、飲食店として経営したり。ほかの市町でも見られますよね、シェアオフィスにしたり、コミュニティスペースとして活用されている事例。ああいったかたちで使われるのは、ひとつの理想かなと思います。
片岡
行政側から「使われなくなる施設があるので、どなたか使いませんか」とお声がけさせていただく場合もあるし、皆さんの方から「あちらの建物を使いたいんですが」と申し出がある場合もあります。今後も協力して、公共施設の有効な利活用を進めていければと思います。あとは、税に関することも私たちの大きな仕事のひとつです。納税通知書を皆さんに送らせてもらっていますが、毎年一定数の方から「この金額は合っていますか」「根拠を教えてください」というようなお問合せをいただきます。一人ひとり対応させてもらっていますが、税の仕組みをわかりやすく説明して、不安なく納税してもらうのも役目のひとつですね。
若山
東広島は留学生や技能実習生など、外国人も多く暮らすまちです。日本語が得意でない方もたくさんいるので、多言語対応や専用アプリを使っての税のお知らせなど、多様な人に寄り添う行政サービスを考えています。
持続可能であることをキーにして
司会
今後のビジョンや、SDGsについて思うところがあれば聞かせてください。
片岡
先ほどの業務内容の続きになりますが、もうひとつ私たちが関わっているのが、財政に関することなんですね。全体の予算編成に携わり、まとめていくことが業務のひとつです。近年ではSDGsをキーにした予算の部分があり、それはSDGs未来都市に選定されてから動きが加速したように感じます。
若山
市民の皆さんの大切な税金がどう使われているのか、予算と決算の報告に関してもわかりやすさを心がけています。
片岡
財政計画に関しては、仕事づくり、暮らしづくり、人づくりなど、5つの大きな柱があるので、これからもこの柱に沿って、限られた財源を真に必要な分野や施策に配分していきたいですね。また、公共施設に関しては、子育て支援施設の拠点を庁舎敷地内に設けるという案があります。今までも各エリアに子育て支援センターはありましたが、中心部に位置する施設を置くのは初めてのこと。これも、“真に必要な分野”のうちのひとつだと考えています。
若山
先ほども話に出た、過疎が進む地域、人が増えていく中心部、それぞれに必要なもの不要なものが違うと思うんですね。そこを見極めて施策や財源を考えていくことが大事だと思っています。小さなことですが、庁舎の壁面にSDGsの17ゴールパネルを貼り出したり、各部署の業務窓口にそれぞれ対応するSDGsゴールのステッカーを掲示して、皆でSDGsを共有できるような意識づけを行っています。少しずつでいいので、全体で取組むんだという雰囲気が醸成されるといいですね。
片岡
東広島は国際学術都市がテーマのひとつになっていて、どちらかというとインテリジェンスなイメージがあると思うんですよね。SDGsという言葉が生まれる前から、先進的な取組みも色々とありました。
若山
確かにそうですね。まちがやっていることに、世界が追い付いてきたというか(笑)。それから、個人的な感じ方なんですけど、SDGsって言葉が当初はあまりピンとこなかったんですよね。それってなんでだろうって考えてみたら、「貧困をなくそう」とか「飢餓をなくそう」とか、日本では当たり前に達成できていた部分も多いからなんじゃないかなって思ったんですよね。なかなか自分の中に刺さらない。けれど、この先それがずっと当たり前であり続けるのかっていうと、それはわからないし、難しい部分が出てくるかもしれない。そういった意味で、達成できているところは「持続可能にしていくのが大事なんだ」と考えるとSDGsの意味が腑に落ちた気がしました。
片岡
まさにそうですよね。「持続可能」っていうのと「誰一人取り残さない」というワード、これは本当に重要だと思います。今後もより積極的にSDGsに係る分野に力を入れ、私たち行政だけではなく、市民の皆さんと一緒になって、よりよいまちづくりを進めていきたいですね。