広域をサポートする東広島市消防局
司会
はじめに、東広島市消防局の構成と役割を教えてください。また、業務を通じて関わってくるSDGsゴールはありますか。
弓場
東広島市消防局は、東広島市のみならず竹原市や大崎上島町といったエリアも管内になっています。各消防署、分署に加え、消防総務課、警防課、指令課、予防課の4つの課で構成されています。消防署では火災をはじめとする災害、救急対応がおもな業務です。
山中
消防総務課は局内の総合的な企画調整や主要事業の進行管理、予算決算の総括などに関することと、消防施設や設備の整備、消防団の組織といったことも私たちの業務です。
沖本
警防課は消防・救急・救助体制の充実強化を図るため、消防救急車両等の整備や維持管理、防火水槽の整備等を行っています。また、医療機関との連絡調整や、救急救命士・救急隊員の教育に関することが私たちの業務です。
弓場
さらに指令課は119番通報の受信や出動指令、通信指令システムの維持管理を行っています。予防課は火災予防の普及や啓発、消防用施設、危険物の審査・検査などに関することが主な業務です。私たちの仕事を通じて達成できると考えているSDGsゴールは、あらゆる人々の健康的な生活の確保と福祉を促進する「3すべての人に健康と福祉を」、安全かつ強靭で持続可能な都市および人間居住を実現する「11住み続けられるまちづくりを」、持続可能な開発のための実施手段を強化し、パートナーシップを活性化する「17パートナーシップで目標を達成しよう」の3つだと考えています。
消防業務に係る複数のSDGsゴール
司会
SDGs達成に関連する具体的な取組みはありますか。また、その取組みを通じて見えてきた課題や解決策があれば教えてください。
山中
消防総務課では施設の整備に関わっているので、今後発生が懸念されている南海トラフ巨大地震などの大規模災害に備え、消防防災活動拠点となる消防署や消防団格納庫の長寿命化や計画的な整備を行っています。建物に関しては、高屋分署が新たに建設中であるほか、南分署の改修工事や北分署の改修設計を行っています。下見分団格納庫、豊栄東分団格納庫も新築しているところです。今後は長寿命化を軸に50年持つように考えています。あとは、感染症対策も考慮し仮眠室の個室化を進めています。
弓場
職員のパフォーマンスを最大限発揮するためにも、休息の環境は大事です。また、近年では少しずつ女性消防士も増えてきたので、洗面室やシャワールームを完備した女性用仮眠室も整えています。有事の際、女性や子どもの被災者に寄り添いやすい女性消防士は、男性消防士とはまた違った活躍をしてくれます。現在は9名の女性消防士が頑張ってくれていますが、近いうちに10名まで増やしたいですね。
山中
それから、災害対応能力を向上させるため、消防ポンプ自動車、高規格救急自動車、小型動力ポンプ付積載車(消防団車両)を最新鋭の車両に更新しています。西分署に導入予定の13mブーム付多目的消防ポンプ自動車はジャッキの張り出しがなく2.5m程度の道路幅でもはしご部分を伸ばすことができ、ビルの5階まで対応可能です。設備や装備品以外については、消防団の体制強化にも力を入れています。地域に根付き、安心と安全を守る仲間として活躍してくれる消防団員は大事な人材です。
弓場
東広島市消防局管内は大学が複数点在しているということもあり、学生団員が県内で最も多いという良さもあるんです。学生団員は、集まって防災について学んだり、所属する大学の消防訓練に団員として参加したりしています。この他、学生団員ではありませんが、来年4月に開署する高屋分署の外壁やロゴデザインに関わってもらった大学生もおられ、学生にとって消防が身近な存在になってきているように感じます。
山中
消防局や消防団の活動はSNSで発信もしているので、興味のある人はぜひ見てみてほしいですね。まちの人の力を借りる消防団はSDGsでいうところの「パートナーシップで目標を達成しよう」の部分であると思うし、災害への備えや消防車両の拡充は「住み続けられるまちづくりを」に関わるところじゃないのかなと思います。警防課の取組みに関してはいかがですか。
沖本
警防課で行っている取組みとしては、救命率向上のための、救急救命体制の充実と応急手当体制の拡充を図っています。もともと救急救命士は医療機関の医師から指導を受けていたのですが、知識や技術が向上してきて現場の人間が教えたほうがいいのではという運びになりました。現在はキャリアを積んだ指導救命士が若手救命士の指導に当たる、生涯教育体制を構築しています。訓練時は現場を想定し、さまざまな症状を訴える患者の対応を行う実践的な内容にしています。市民の皆さんに向けては、応急手当の講習や救命講習を自治会や学校、事務所などで行っています。出前講座もしていますので、ご要望のある団体や事業所があれば声をかけていただけたらと思います。
弓場
救命講習に参加されて、いざ演習を行うと結構恥ずかしがられる方もいるんですよね。でも、実際に救急現場に居合わせてしまったら、そんなことは言ってられません。パニックにならないためにも、応急手当や救命講習は一度受けてもらえたらいいかなと思います。救急車が到着するまでの間に手当をすることで、救命の可能性が高くなると思っています。
沖本
AEDの設置場所なども知っておくといいと思います。東広島市には398台のAEDが様々な施設などに置いてあるんです。使用する際は、音声ガイダンスが流れるので、それに従って操作してもらったら大丈夫です。また、119番通報をいただいた際に、心臓マッサージなどの応急手当を口頭指導することもあります。近年では救命講習の一部をオンライン化したり、受講しやすい環境整備にも努めています。これらの取組みもまた、「すべての人に健康と福祉を」「住み続けられるまちづくりを」「パートナーシップで目標を達成しよう」に関わる部分だと思います。